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淡水カーボンはブルーカーボンを超えるか 湖や池の炭素貯留が変える評価の物差しと企業の備え

淡水カーボンはブルーカーボンを超えるか 湖や池の炭素貯留が変える評価の物差しと企業の備え

ニュースの概要

PR TIMESで公表された研究成果によると、湖や池、川、ダム湖など陸の水辺にたまる「淡水カーボン」が、海藻や海草、マングローブなどが担うブルーカーボンを上回るCO2貯留能力を持つことが分かったという。これまで炭素の貯留先としては森林と海が注目され、淡水域はCO2やメタンの発生源として語られることが多かった。今回の解明は、その見方に修正を迫る内容である。ただし、貯留量の比べ方は面積あたりか総量か、期間をどう区切るかで結論が変わりうる。本記事では公表内容を手がかりに、その意味と実務への影響を考える。

引用元: 「淡水カーボン」が「ブルーカーボン」を上回るCO2貯留能力を発揮することを解明(PR TIMES)

分析・見解

淡水域は炭素をためこむ「底の深い器」だった

湖や池の底には、枯れたプランクトンや流れ込んだ落ち葉、土砂が降り積もる。底は酸素が乏しく、有機物の分解が遅い。そのため炭素が長く閉じ込められる。仕組みは海の藻場やマングローブ林と同じだ。

世界の推計では、湖やダム湖が年間に埋める炭素は1億トン台に及ぶとする研究もある。面積は海よりずっと小さいが、狭い範囲に高い密度で炭素が積もる。今回の「上回る」という主張は、この性質を数字で示した点に意味があると読める。

「上回る」の中身は比べ方で変わる

面積あたりで比べるのか、地球全体の総量で比べるのかで、結論は大きく変わる。期間を数十年と見るか、数百年と見るかでも違ってくる。公表内容を使うときは、この比較条件を必ず確認したい。

もう一つ見落としやすいのが、炭素の出どころである。湖にたまる炭素の多くは、もとは流域の森や農地が固定したものだ。森から湖へ炭素が移っただけなら、大気から新たに吸収した量とは言えない。ブルーカーボンの議論でも、他の場所から運ばれた炭素の扱いは論点になってきた。淡水でも同じ整理が欠かせない。

見えにくい敵はメタンの発生

淡水域の底は酸素が乏しいため、メタンも出やすい。メタンは100年で見るとCO2の約28倍の温室効果を持つ。栄養分の多い池ほど炭素はたまりやすいが、メタンも増える。貯留量だけを誇ると、実態を見誤る。

海でもメタンは出るが、淡水域では影響が相対的に大きいと指摘されている。評価の軸は「埋めた炭素」から、メタンを差し引いた「正味の効果」へ移すべきだ。

制度は海を前提に作られている

日本のJブルークレジットは、海草や海藻、マングローブなど海辺の生態系を対象に整えられてきた。淡水域は対象外であり、測り方の標準もまだ乏しい。必要なのは、堆積物の柱状試料(=底の泥を筒で抜いた試料)を使った年代測定と、メタン測定の組み合わせだ。

ため池は全国に約16万か所あるとされる。ただし農業用水の管理や所有者の調整が絡むため、制度化には数年単位の時間がかかるだろう。

ビジネスへの影響

水辺を持つ企業はまず現状を記録する

工場の調整池、ゴルフ場の池、社有地の沼やダム湖を持つ企業は少なくない。今すぐクレジットになるわけではない。だが、水深、堆積の厚さ、水質、周辺の土地利用を記録しておけば、将来の測定で基準年のデータとして使える。費用は大きくないので、環境報告の担当者が着手しやすい。

海だけに偏った計画を見直す三つの確認

一つ目は、目指すのが吸収量の主張か、削減の補完かを決めること。二つ目は、メタンを含めた正味で語ること。三つ目は、森林から移ってきた分の二重計上を避けることだ。この三点を満たさない説明は、後で批判を受けやすい。

海のクレジットを買う企業も、淡水カーボンを比較材料に入れて調達先を分散する価値がある。ただし現時点では認証の仕組みがないため、購入ではなく調査や実証への参加から始めるのが安全だ。

自治体や地域団体と組む動きが先行する

ため池や湖沼を管理するのは、自治体、土地改良区、漁協であることが多い。浚渫(=底の泥をさらうこと)で泥を取り除けば、ためた炭素を再び放出しかねない。管理方法の工夫そのものが価値になる。

企業は資金とデータ整備で参加し、地域は管理の知見を出す形が現実的だ。最初は水質改善や防災、生き物の保全といった成果と合わせて説明する方が、社内の承認を得やすい。

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