このページはPR・広告を含みます

横浜港のカーボンニュートラルポートと藻場が担う補完役

横浜港のカーボンニュートラルポートと藻場が担う補完役

ニュースの概要

横浜市は、横浜港を脱炭素の拠点に変える「カーボンニュートラルポート」の取組を進めている。港では船舶の接岸中の燃料使用、荷役機械、トラックの出入り、倉庫の電力などから多くの二酸化炭素が出る。市はこうした排出を減らすため、荷役機械の電動化や水素の活用、停泊中の船に陸から電気を送る仕組みの検討などを、港を使う事業者と一緒に進めている。港全体を一つの経済圏として捉え、行政と民間が足並みをそろえて排出ゼロを目指す点に特徴がある。ただし、どれほど努力しても排出をゼロにしきれない部分は残る。その残りをどう扱うかが、次の論点になりつつある。

引用元: カーボンニュートラルポートの取組(横浜市)

分析・見解

港の排出削減は、出口の整備まで進んでいる

港湾の脱炭素は、まず排出源を減らす作業から始まる。横浜港で言えば、岸壁のクレーンや構内の車両を電気や水素で動かす方式に替える。停泊中の船が発電機を回し続けると排気が出るので、陸側の電気を使えるようにする。これらは設備投資の形が見えやすく、国の補助制度とも相性がよい。

実際、全国で国が指定する港の計画づくりは進み、各港が2030年や2050年の削減目標を掲げている。横浜港もその流れの中にある。排出を減らす打ち手は、数年前に比べるとかなり具体的になった。

減らしきれない排出が必ず残るという現実

ただ、ここに構造的な壁がある。大型船の燃料は、すぐに電気へ置き換えられない。外航船は世界中を走るので、横浜港だけが水素や燃料アンモニアを用意しても、船側の対応が追いつかなければ効果は限られる。港の構内を完全に電化しても、船が持ち込む排出は港の外側の問題として残る。

つまり、港の努力だけで実質ゼロに届かない部分が、どの港にも最後に残る。ここを埋める手段が、排出量を相殺する仕組みである。

港のすぐ隣にある海そのものが吸収源になる

見落とされやすいのが、港のそばの海が二酸化炭素を吸う力である。海草や海藻が育つ藻場、干潟、塩性湿地は、光合成で取り込んだ炭素を海底に長く貯める。これが一般にブルーカーボンと呼ばれる。

日本では、藻場の再生や海藻養殖によって生まれた吸収量を、Jブルークレジットとして認証し売買する制度が動き出している。横浜のような都市型の港でも、護岸を生き物が育つ構造に変えたり、浚渫した土砂で浅場を造成したりする事例がある。港の整備と吸収源づくりを同じ工事で兼ねられる点は、陸の森林にはない強みだ。

独自の視点は排出削減と吸収を一つの港の物語にすること

私が重要だと考えるのは、削減と吸収を別々の部署の仕事にしないことである。排出を減らす取組は港湾局、藻場づくりは環境や水産の担当、と分かれがちだ。しかし港を使う企業から見れば、同じ港で減らし、同じ港の海で吸わせ、その合計を示せる方が説明しやすい。

欧州の主要港では、陸電の整備と沿岸の自然再生を一体で語る例が増えている。測定と検証の手順が整っていれば、港単位で見える化した成果が荷主への訴求材料にもなる。横浜港が一歩先に出るなら、この統合の発信が鍵になる。

ビジネスへの影響

荷主や物流企業が今から確認しておくべきこと

横浜港を使う企業は、自社の物流が出す排出量のうち、港での作業分がどれだけかを把握しておきたい。取引先から排出量の報告を求められる場面は増えており、港湾の取組はその算定の前提を変える可能性がある。陸電が使える岸壁を選ぶ、電動荷役の導入港を優先するなど、選定基準に脱炭素の項目を加える価値は高い。

また、港が公表する削減計画の進み具合を、年に一度は見直す習慣を持つとよい。計画の更新に合わせて自社の目標も調整できる。

減らしきれない分を、地域の海で埋める選択肢

削減後に残る排出は、価格や品質の分かる相殺手段で埋めることになる。その候補として、地元の藻場再生を支援する形は話が通りやすい。企業の環境報告で、自社の事業地の近くの海を守った成果として語れるからだ。

実務では、認証を受けた吸収量かどうか、吸収の測り方が公開されているか、漁業者との合意があるかを確認する。この三点が揃わないと、後から説明に苦しむ。まず小さな量から試し、検証の手順を社内に残すところから始めたい。

地域との関係づくりを早めに進める

港の脱炭素は、行政、漁業者、地元の大学、企業の協力が欠かせない。早い段階で声をかけた企業ほど、事業の設計に意見を反映できる。逆に完成後に参加すると、条件を受け入れるだけになりやすい。協議の場に出る担当者を決めておくことが、最初の実務的な一手である。

関連記事