ニュースの概要
神奈川県葉山町で、企業と地域が手を組んで進める藻場の再生活動が紹介された。対象はカジメやワカメなどの海藻である。長年続いた再生活動は、いまクレジットの創出だけにとどまらない。環境教育、漁業体験、観光までを一つにつなぐ仕組みへ育っている。企業がクレジットを買い、グリーン水素を運ぶトラックの排出を相殺する例もあるという。一方で、冬の海水温が上がり、海藻の発芽や幼い時期の成長が妨げられている。再生の努力が気候変動の影響と競い合う、難しい局面も報告された。
引用元: 葉山の藻場再生で企業・地域連携によるブルーカーボン活用が進展(Ecozzeria)
分析・見解
海藻を植える活動が、お金と人を呼ぶ仕組みに変わった
葉山の取り組みで目を引くのは、順番である。最初にあったのはクレジットではなく、藻場を取り戻したいという地域の思いだった。そこに企業の資金が加わり、買い手のつく価値が生まれた。
多くの自治体は、制度が整ってから事業を組み立てる。葉山は逆で、活動が先にあり、制度が後から追いついた。この順番が、活動の厚みと説得力につながっている。
クレジット収入だけでは足りない現実と、体験を重ねる工夫
ブルーカーボンクレジット(=海の生き物が吸い込んだ二酸化炭素量を売買できる形にしたもの)は、まだ市場が小さい。一枚あたりの収入だけで、海中の作業や監視の費用をまかなうのは難しい。
葉山が環境教育、漁業体験、観光を重ねたのは、その穴を埋める知恵と読める。子どもや来訪者が海に関わるほど、藻場を守る味方が増える。クレジットは収入源であると同時に、人を呼ぶ入り口にもなっている。
冬の水温上昇が、藻場再生の前提を揺さぶる
海藻は、水温が下がる季節に胞子を出し、芽を出す種類が多い。冬の海が暖かくなると、この最初の段階でつまずく。せっかく苗を増やしても、育つ前に消える恐れがある。
実は、これは本事業の最大の矛盾である。クレジットは二酸化炭素を減らす目的で買われるが、その源となる海藻が温暖化の被害を受けている。守るはずの仕組みが、守られる側の変化に脅かされている。
買い手の使い方まで含めて、信頼が試される段階に入る
グリーン水素運搬トラックの排出を、クレジットで相殺する例は象徴的である。環境に配慮した事業の「最後の取り残し」を埋める使い方は、納得を得やすい。
ただし、相殺に頼りすぎると批判を招く。まず自社で減らし、減らしきれない分を海で補う。この順序を示せる企業ほど、買い手としての評価が高まる。今後は、藻場の維持を長期で約束できるかが問われる。
ビジネスへの影響
クレジットを買う企業は、物語と数字を両方そろえる
葉山の例は、購入が単なる帳尻合わせでないことを示す。どの海の、どの藻場を、誰が育てているのか。現地を見に行ける関係があると、社内外への説明力が大きく変わる。
まず自社の排出量を測り、減らせる分を減らす。そのうえで残りの量を見積もり、小さな単位から購入を始めるのが現実的である。現地見学や社員の体験を組み合わせれば、研修や採用の場面でも使える。
自治体や漁協は、複数の収入の柱を最初から設計する
クレジットだけに頼る計画は、水温上昇や不作で一気に崩れる。体験、教育、観光、水産物の付加価値を並べ、収入を分散させたい。企業との契約も、数年単位の継続購入を前提に結ぶほうが、作業の担い手を確保しやすい。
また、種苗の保存や、暖かい水に強い個体の選抜といった備えも、早い段階で計画に入れておきたい。藻場が失われた場合の扱いを、契約書に明記しておくことも欠かせない。